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ロボットSIはアイデアこそが力の源泉、コスモ技研の強さは環境作りに



スマートファクトリー ロボットSier コスモ技研

「モノづくりの会社が設備だけでなく上位システムとも連携できる」。

2月に東京ビッグサイトで開かれた展示会「ロボデックス2020」で、自社の強みを力強くアピールしたのはコスモ技研営業技術部部門長の柴田和宏。創業社長の五十嵐宏一が”第2世代”と呼ぶ次世代リーダーだ。


一品料理の無人化システム 他社が敬遠する案件を受注

新規システムはiPadで操作できる

 ロボットが縦横無尽に動いて容器をつかみ、決められた番地まで運ぶ。中身を充填したら別の場所へ持って行く。容器は約100キログラムもあり、表面はつるつるして滑りやすい。ロボットが持つのを苦手とする対象だが、落下は許されない。コスモ技研は大手化学メーカー向けシステムで、ロボットハンドを工夫して課題をクリアし、顧客の基幹システムを通じて全体の動きを遠隔操作できるようにした。

 停電などあらゆる状況を想定し、トラブルを二重、三重にブロックする。システム導入後も顧客の仕様変更に柔軟に対応し、監視カメラや遠隔操作でバックアップしている。

 医療、医薬品関連の受注も多い。ある医療品メーカー向けには、第1期工事で50台、2期工事でさらに50台のロボットを駆使したシステムを導入した。人命にも関わる医療関連ではラインを止めることは許されない。万一、止まった場合も一刻も早い復旧が求められる。このため各工場、部屋ごとに監視カメラを設置し、プログラミングをリモートコントロールで行う。機械トラブルに現地で即対応できるようコスモ技研のエンジニアも3人常駐している。

 こうした難しい案件こそコスモ技研の真骨頂。「これからの時代はロボットだけ、メカだけではダメ。10年、15年先を見据え、一気通貫でシステム全体を構築できるロボットシステムインテグレーター(SI)が求められている」と柴田は力を込める。

 多くのSIは、顧客の仕様書をベースにシステムを組むが、コスモ技研は顧客にヒアリングし、仕様書を一から作り上げる”開発型”。「こういうことしたいんだけど」という顧客の希望や漠然としたイメージを一品料理のシステムとして組み上げる。「どこでもできる金額勝負の案件は受けない」と柴田。付加価値が高く、難しい案件ばかりにあえて挑戦する軸は決してぶれない。


アイデアが生まれる環境づくり


 青みがかったガラス張りが印象的なモダンなビル。銀座のファッション店「GAP」のデザインを気に入った五十嵐が新本社に取り入れた。ホテルのフロントのようなおしゃれなエントランスに入ると、美しいヒーリング音楽が流れている。愛知県小牧市にあるコスモ技研の本社は、事業拡大に向けた増築工事が4月末に完成する。

 オフィスには営業技術、機械設計、電気制御の各部門のエンジニアがワンフロアに集まる。社員の机は通常の約2倍あり、パソコンを2台使いできる。いすは人間工学に基づいた疲れにくいデザイン。社長の五十嵐も一番奥に机を並べる。

 「案件は他社が断るような難しいものばかり。アイデア勝負だから煮詰まってパンクしないように、少しでも刺激を与えアイデアが出やすい環境を整えている」(柴田)という。壁はホワイトボードになっており、アイデアが浮かんだらその場ですぐに議論できる。

 極めつけは3階のラウンジだ。お茶やコーヒーだけでなく、酒類もずらりと並ぶ。酒は月に1回開く座談会のためのもの。座談会ではバーベーキューをしながら各世代の社員が交流。毎回、テーマを決め、個人発表も行う。「和気藹々とした雰囲気の中で、普段はなかなか言えない意見も言える」と社員の一体感を高めるコミュニケーションの場となっている。


将来を見据えて、インパクト抜群のコスモマン

 こうしたアットホームな雰囲気が採用にもつながった。自動車関連企業が集積し、全国でも有効求人倍率の高さが屈指の愛知県にあって、同社は2019年だけで7人の新戦力の確保に成功した。

 採用も担当する柴田は「ロボットの知識がなくても、素直でまじめであれば社内で教育する。半年後を観点にしているのではない。5年後、10年後を想定して採用している」と先を見据える。

コスモ技研営業技術部部門長 柴田和宏 氏

 「変わってますね」。展示会などで差し出すと必ずと言っていいほど、相手から声をかけられるのが同社の名刺だ。イメージキャラクターである全身緑色のコスモマンが描かれている。アメリカのコミックから飛び出してきたかのようなコスモマンのインパクトは抜群。「知名度をすぐに上げるのは大変。一目で視覚効果があり、会話につながる」というアイデアから、約7年前に生まれた。

 技術力には自信があり、口コミで認知度も高まってきた。「今では”ロボットシステム”で検索すると、”コスモ技研”が候補の一番上に登場する」(柴田)という。

 「私がいなくなっても全然心配していない」と創業社長の五十嵐宏一は笑顔を浮かべる。かつて大手の営業職でも成績トップを張った五十嵐の経営センスで成長してきたコスモ技研だが、次世代を担うリーダーたちが順調に育っている。


三本の矢

 2011年、五十嵐は営業技術、機械設計、制御システムの各部門の長に30代の中堅を抜擢した。営業技術を担当する柴田もその一人。五十嵐は柴田らを第2世代と呼び、世代交代を進めている。「以前は五十嵐がAと言えば、Aで決まりだったが、今はAはどうかと投げかけられ、3人で議論して経営するという枠組みができてきた」(柴田)と着実に経験と実績を積み重ねている。

 「今はまだ社長の役割を3分割している感じ」(同)と五十嵐の存在感の大きさを痛感する一方、「決定するからには責任がある。受け身から能動的に切り替えた」と意識の変化も生まれた。

 「五十嵐が生んだコスモ技研という会社のユニークな思想、アットホームな社風を維持しながら、小さいけどこんな面白い会社があるということをできるだけ多くの人に知ってもらいたい。小難しいこといっぱいやってて楽しい、世にないもの送り出したいと思っている人材を発掘していきたい」と意気込む。現在は主力となった第2世代から20ー30代の”第3世代”へのきめ細かな教育も始めた。ワンチームで将来を切り拓く。


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